太陽系12天体の重力を比較 同じ高さから物体を落とすと…?

【▲ 太陽系の天体の抽象的な画像(Credit: Shutterstock)】

みなさんは9.8という数字を見て何を思い浮かべますか?

「理系」志望や「理系」出身の方ならば、「重力加速度」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。学生時代に「重力加速度」という言葉といっしょに「9.8」という数字を闇雲に記憶させられた思い出がよみがえってくる人もいるかもしれません。

重力加速度とは重力が物体に及ぼす加速度のことで、ここでは「重力の大きさ」と言い換えておきます。また「表面重力」と呼ばれることもあります。

地球上ではその値が9.8[m/s2]なのです。月面上では1.6[m/s2]なので、月の重力は地球の1/6と習った方もいるでしょう。つまり、同じ高さから物体を落とすと、月面に届く時間が地球上よりも長くかかるということです。

ただし、重力が1/6だからといって時間が6倍かかることにはならないので注意しましょう。それは、簡単に言えば、重力“加速度”であって“速度”ではないからです。

こちらのアニメーションは、太陽、太陽系の8惑星、準惑星の冥王星、小惑星(現在は準惑星に分類)のケレス、月の12天体での重力加速度のちがいを表現しています。

つまり、物体(ボール)を高さ1km1000m)から天体表面に同時に自由落下(物体に力を加えずに自然に落とすこと)させたときの様子を示しています。

空気抵抗(大気による抵抗)はなしと仮定されています。真空中では、鉄球でもリンゴでも紙片でも(物体の質量や形状に関わらず)、地上に届く時間は同じですが、実際には地球表面には大気(空気)が存在するため空気抵抗が生じます

ここではかなり大雑把な説明をしているので、正確でわかりやすい説明はこちらをご覧ください。

天体と落下の様子を比較しながら見ていると、いろいろおもしろいことに気が付くかもしれません。例えば、天王星は地球よりもずっと大きな惑星なのに、地球より少しゆっくりとボールが引き下げられます。それは天王星の平均密度が小さいためで、表面は大部分の質量(核になっている部分)から遠く離れているからです。同様に、火星は水星のほぼ2倍の質量ですが、表面の重力は実際には同じであることがわかります。これは、水星が火星よりもはるかに密度が大きいことを示しています。

密度が大きい(半径が小さくて質量が大きい)天体ほど重力加速度が大きくなるのです。

画面上段は落下開始からの時間(t[])と、その時の物体の速度(v[km/])、下段は天体名と重力加速度[m/s2]を表示しています。数値等はNASAこちらのデータに基づいています。

天体表面の重力は天体の「自転速度」の影響も受けます。地球上の重力は北極・南極付近では強く、赤道付近では弱くなっています。それは両極に比べ赤道の方が地軸から遠いため、強い遠心力が生じ、これが地球の中心に向かって引く重力を弱める働きをして、結果的に重力加速度が小さくなるからです。

こちらのアニメーションは太陽系内の惑星・準惑星の大きさと自転速度の様子を比較したものです。

さらにこちらは、冒頭の動画とは逆に天体表面から「脱出速度」でロケットを打ち上げたとき、上空50kmまで到達する様子のアニメーションです。

脱出速度とは、物体が天体の重力を振り切って脱出できる最小限の速度のことです。この場合も空気抵抗がないことを前提としており、重力による引き下げが含まれますが、その影響はごくわずかです。画面上段は発射からの時間[]、下段は天体名と脱出速度[km/]を表示しています。

なお、この三つのアニメーションを作成したJames O’Donoghue(ジェームズ・オドノヒュー)博士はイギリス出身で、現在はJAXAに所属する惑星科学者です。以前はNASAのゴダードスペースフライトセンターで勤務していたとのことです。

 

Video Credit: Dr James O’Donoghue / Shutterstock
Source: Dr James O’Donoghue / NHK
文/吉田哲郎

おすすめの記事